ネックジョイント
高精度な組み込みを約束する「後仕込み」

ボディとネックはそれぞれ別々に塗装された後、伝統的な蟻溝(ありみぞ)工法によってジョイントされます。この様に塗装後にジョイントされる方式を「後仕込み」と呼んでいます。

ジョイント後にまとめて塗装を行えば塗装が一度で済むため効率が良いですが、それでもヘッドウェイがこのボディとネックを別々に塗装する後仕込みを行う理由は、主に二つあります。
1. 接合部の仕上げの美しさ
別々に塗装を行うため、ネックはさらさらとしたスムーズな感触のサテン仕上げ、ボディーは高級感あるグロス仕上げにそれぞれ塗り分けられることが可能です。さらに、ジョイント後に塗装をするとどうしてもネックとボディの接合部を綺麗に研磨することが出来なく、塗料の吹き溜まりができてしまいますが、後仕込みでは接合部に吹き溜まりが無く、美しい仕上がりになります。
デメリットとしては、ジョイント部に生じる隙間を塗装で埋める事が出来ません。その為、後仕込みの場合はジョイントが隙間無く正確に接合されていなければならず、工場の技術力の高さの証明にもなります。

2. ギターそれぞれの個体に合わせたネックの仕込み角の調整
ギターの塗装工程では、吹き付けた塗料を乾燥させる工程が複数回繰り返されるため、どうしてもボディやネックは温度と湿度の大きな変化にさらされることとなります。この変化によって木材の伸縮が生じることは避けられず、薄い板を貼り合わせた構造であるアコースティックギターのボディは、塗装前と塗装後で若干の変化が生じます(※)。
特にトップ材においては、塗装後にわずかな膨らみや凹みが生じる場合があります。Headwayでは塗装後のネックの仕込みの際に、それぞれのギターのトップ材の状態に合わせてわずかにネックの仕込み角度を調整することにより、最適なブリッジとサドルの高さを保ちながら適正弦高のセットアップを行うことができます。

ボディとネックを接合した後に塗装を行う場合(後仕込みで無い場合)は、塗装中にボディの状態が変化してしまった場合に、サドルやブリッジの高さを変える、またはトラスロッドを調整することでしか、弦高のセットアップを行うことができません。サドルは高すぎるとブリッジの割れの原因となる場合があり、反対に低すぎると、お客様が購入した後に弦高を低くする余地が少なくなってしまいます。
Headwayでは1本1本のギターの状態を見ながら時間をかけて適切なネック仕込みをすることにより、最適な弦高設定をお客様に届けることを追求しています。
※全ての木材は加工前に自然乾燥と人工乾燥を行うことにより安定した状態に仕上げてから加工を行っており、また音質を保ちながらトップ材が安定するようなブレーシングの組み方も長年研究を続けてきています。それでも木材の性質上、塗装工程を経た後にボディの状態が変化することは完全には防げません。
精度が鳴りを決める「アリ溝」ジョイント

Headwayは昔ながらの蟻溝(ありみぞ)工法と呼ばれるジョイント方法を採用しています。近年ではより簡単なボルトなどを使用したジョイントのモデルも増えてきていますが、蟻溝方式のジョイントは接合面積も広く、高精度に仕上げればネックとボディはあたかもひとつの木材であるかの様に豊かな鳴りを生み出します。

まさにアコースティックギターに最も適したジョイント方式であると言えます。また、「ほぞ」と呼ばれるジョイント部の突起は、一般的な物よりも大きめに作られており、接合強度を高めています。そしてここでのネック角度などの調整は、演奏性や鳴りに大きく影響し、高度な技術を要する工程でもあります。
